草木灰からモルタルへ ─ 化学変化の流れ

草木灰に水を加え、さらに高温で焼成すると何が起きるのか。
主成分の変化と、モルタルとの関係を分かりやすくまとめた解説です。

草木灰からモルタルになるまでの図解
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1. 草木灰の主成分(焼成前)

これらは、燃焼時に有機物が燃え尽き、無機ミネラルが酸化・炭酸化したものです。

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2. 水を加えて粘土状にしたときの変化

灰に水を加えると、次のようなことが起こります。

この段階では、化学的な硬化反応はほとんど起きません。
「乾くと固まる」のは、主に水分が蒸発して粒子同士が物理的に結びつくためです。

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3. 焼成(高温加熱)時の変化

温度によって起こる変化の概要は次のとおりです。

温度 主な変化 化学反応例 結果
200–400 °C 水分・有機残留物の除去 H2O → 蒸発 乾燥・脱水
600–800 °C 炭酸塩の分解 CaCO3 → CaO + CO2
MgCO3 → MgO + CO2
酸化カルシウム(生石灰)や酸化マグネシウム生成
900–1100 °C 酸化物・シリカ・リン酸塩が部分的に反応 CaO + SiO2 → CaSiO3 など カルシウムシリケート類(軽いガラス質)
1200 °C 以上 融着(ガラス化) ガラス状固体(脆い塊)
焼成後の主成分は、
CaO(酸化カルシウム)、MgO、K2O(酸化カリウム)、SiO2(シリカ)などの 金属酸化物が主体になります。
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4. モルタルとの類似点・相違点

項目 草木灰団子 セメントモルタル
主成分 炭酸塩・酸化物(Ca, K, Mg) 石灰石 + 粘土(CaO, SiO2, Al2O3
硬化機構 水分蒸発(物理的)または焼成による焼結 水和反応(化学的)
焼成後 酸化物・シリケートの塊(ガラス質) 高温焼成後にクリンカーとして粉砕
再び水を加えた場合 CaO が水と反応して Ca(OH)2 を生成し、一部硬化 水和反応により再固化(セメント硬化)

つまり、草木灰団子を高温で焼くと、 「生石灰を含む酸化物の塊」になります。
この塊を粉砕して再び水を加えると、 CaO + H2O → Ca(OH)2(消石灰) の反応が起こり、モルタルのように硬化します。
しかし、セメントのような強固な結晶構造(C–S–Hゲル)は形成されないため、 脆く、水に弱いという特徴があります。

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5. まとめ ─ 段階ごとの主成分変化

段階 主な変化 主成分
混練前 灰(炭酸塩)の状態 K2CO3, CaCO3, MgCO3
乾燥後 水分が蒸発 主成分は混練前と同じ
焼成後(600–1000 °C) 脱炭酸・酸化 CaO, MgO, K2O, SiO2
焼成物+水 消石灰生成・軽度の固化 Ca(OH)2, Mg(OH)2

もし目的が「自然素材でモルタル代替を作る」ことであれば、
草木灰に 粘土(SiO2・Al2O3 を多めに混ぜて焼くことで、
天然セメント(古代ローマンセメント) に近い反応を起こす可能性があります。

※ 本ページは学習・イメージ理解のための概略図解であり、実験・施工の際は安全対策と詳細な専門資料の確認をおすすめします。