草木灰に水を加え、さらに高温で焼成すると何が起きるのか。
主成分の変化と、モルタルとの関係を分かりやすくまとめた解説です。
これらは、燃焼時に有機物が燃え尽き、無機ミネラルが酸化・炭酸化したものです。
灰に水を加えると、次のようなことが起こります。
この段階では、化学的な硬化反応はほとんど起きません。
「乾くと固まる」のは、主に水分が蒸発して粒子同士が物理的に結びつくためです。
温度によって起こる変化の概要は次のとおりです。
| 温度 | 主な変化 | 化学反応例 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 200–400 °C | 水分・有機残留物の除去 | H2O → 蒸発 | 乾燥・脱水 |
| 600–800 °C | 炭酸塩の分解 |
CaCO3 → CaO + CO2↑ MgCO3 → MgO + CO2↑ |
酸化カルシウム(生石灰)や酸化マグネシウム生成 |
| 900–1100 °C | 酸化物・シリカ・リン酸塩が部分的に反応 | CaO + SiO2 → CaSiO3 など | カルシウムシリケート類(軽いガラス質) |
| 1200 °C 以上 | 融着(ガラス化) | — | ガラス状固体(脆い塊) |
| 項目 | 草木灰団子 | セメントモルタル |
|---|---|---|
| 主成分 | 炭酸塩・酸化物(Ca, K, Mg) | 石灰石 + 粘土(CaO, SiO2, Al2O3) |
| 硬化機構 | 水分蒸発(物理的)または焼成による焼結 | 水和反応(化学的) |
| 焼成後 | 酸化物・シリケートの塊(ガラス質) | 高温焼成後にクリンカーとして粉砕 |
| 再び水を加えた場合 | CaO が水と反応して Ca(OH)2 を生成し、一部硬化 | 水和反応により再固化(セメント硬化) |
つまり、草木灰団子を高温で焼くと、
「生石灰を含む酸化物の塊」になります。
この塊を粉砕して再び水を加えると、
CaO + H2O → Ca(OH)2(消石灰)
の反応が起こり、モルタルのように硬化します。
しかし、セメントのような強固な結晶構造(C–S–Hゲル)は形成されないため、
脆く、水に弱いという特徴があります。
| 段階 | 主な変化 | 主成分 |
|---|---|---|
| 混練前 | 灰(炭酸塩)の状態 | K2CO3, CaCO3, MgCO3 |
| 乾燥後 | 水分が蒸発 | 主成分は混練前と同じ |
| 焼成後(600–1000 °C) | 脱炭酸・酸化 | CaO, MgO, K2O, SiO2 |
| 焼成物+水 | 消石灰生成・軽度の固化 | Ca(OH)2, Mg(OH)2 |
もし目的が「自然素材でモルタル代替を作る」ことであれば、
草木灰に 粘土(SiO2・Al2O3) を多めに混ぜて焼くことで、
天然セメント(古代ローマンセメント) に近い反応を起こす可能性があります。
※ 本ページは学習・イメージ理解のための概略図解であり、実験・施工の際は安全対策と詳細な専門資料の確認をおすすめします。