論考

フセイン元大統領が神に挑戦した結果

─ 滅びたバビロンを蘇らせようとした男の末路 ─

歴史・聖書・象徴性をめぐる短いエッセイ

高い所から町々を眺める、フセインに似た古代バビロニアの王の挿絵
挿絵:高い所から町々を眺めるフセイン似の古代バビロニアの王(1024×1536)

かつてメソポタミア文明の栄華を極めた古代都市バビロン。
聖書では「傲慢の象徴」「神に背く人間の都」として描かれ、イザヤ書やエレミヤ書では「二度と住まわれることはない」と預言されています。

ところが20世紀末、その預言に逆らうかのような人物が現れました。
イラクのサッダーム・フセイン元大統領です。


■ ネブカドネザルの再来を自称した独裁者

フセインは自らを古代バビロン王ネブカドネザル2世の再来と見なし、1980年代に「バビロン復興計画」を開始しました。
彼は遺跡の上に新しい城壁を築き、自分の名を刻んだレンガを積み上げ、宮殿まで建設しました。
まるで古代の王のように、自分の力で栄光を再現しようとしたのです。

この事業は観光整備という名目で行われましたが、実際には自らの権力と不滅の名声を誇示するための政治的象徴に過ぎませんでした。


■ 神の預言をあざ笑うような行為

フセインのバビロン再建は、聖書に記された預言への挑戦にも見えました。

「バビロンはもはや住まわれることがない。
世々にわたりそこに住む者はいない。」(イザヤ13:19–20)

かつて人々が神に背いて塔を築いた「バベルの塔」の地で、再び人の傲慢が繰り返されたのです。
しかし、その栄華は長くは続きませんでした。


■ 戦争と崩壊、そして沈黙の遺跡へ

1991年の湾岸戦争、そして2003年のイラク戦争によってフセイン政権は崩壊。
彼が建てた宮殿は放棄され、アメリカ軍の駐屯地となったバビロン遺跡は深刻な損傷を受けました。
彼の名が刻まれたレンガも崩れ落ち、観光計画は完全に中断。
その場所は「復興」ではなく、滅びの象徴として残ることになりました。


■ 神に挑んだ者の結末

サッダーム・フセインは最期、裁判で有罪判決を受け、処刑されました。
彼が夢見た「栄光の再建」は幻と消え、バビロンは今も荒れ果てたままです。

人の権力も、神の宣言を覆すことはできません。
預言の通り──
「バビロンは永久に荒廃したまま」となったのです。


🌿 結語

フセインの野望は、古代の「バベルの塔」の物語を現代に再現したようでした。
しかしその結果は同じ──傲慢の果ての崩壊。
歴史は繰り返し、聖書の言葉が再び現実の中で証明されたのです。

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